コンセプト|なぜ微小領域温度計測か?



全ての製品・部品がこれまでになく小さくなった結果、異常発熱の検査・分析の重要性が高まっています 半導体市場は拡大を続け、露光技術、製造技術、MEMSの進化により半導体・電子基板の微細化がさらに進んでいます。並行して電子部品や素材、接合部位等全てが小型化を続けています。 さらに、AI, カーボンニュートラル, グリーンエネルギー等のテーマがより高出力と低消費電力、低コストな半導体が求められています。 チップサイズは小さくなり、半導体設計の微細化が進み、設計パターン通りの製造難易度が上がるにつれ短絡、クラック等の問題が発生しやすくなっています。
その電気的問題は発熱現象として現れます。 寸法が半分、面積1/4になれば、同じ熱エネルギーでも理想的に温度は1.4倍、 80℃近辺であった温度上昇が、単純計算で200℃を超えて上昇することになります。 現実にはより小さな製造物は理論上より発熱しやすくなり、設計上の想定を超えた 異常発熱が多く報告されるようになっています。

必要とされる微小領域のサーモグラフィ検査、分析、制御の必要性は高まっています

・ホットスポット検出 ・PCB基板検査 ・ボンディング、ワイヤの温度監視 ・樹脂クラック、封止材検査
短絡分析 ・加熱接着・光硬化型接着の温度監視

テスターでは時間がかかりすぎ、特定が難しい。 熱電対では小さすぎて測れない

半導体は電子を制御するものであるから、検査と分析の標準的手法は電気テスターを用います。
しかしながら、問題があることは分かっているが、どこにあるか特定にするには手間と時間がかかり過ぎるという 問題があります。複雑で狭小ピッチリードパタンと数多くの部品が検査時間を長くし、複雑にしています。 熱電対は温度計測の標準的手法ですが、小さくなりすぎた半導体に対して、熱容量が大きすぎ、貼るには難しく、 事実上温度計測ができません。 シミュレーションでは精度±10~20%で、かつ極所の予測が困難。 そのため非接触温度計測が必要とされています。

標準的なサーモグラフィでは計測できない:微小領域は解像しなければならない

サーモグラフィは面積当たりの赤外線全感度スペクトルを積分した値を温度換算しています。 そのため、解像度不足によるぼけた画像では温度は低く表示されます。ミクロンレベルの計測にはそれ以上の解像度が必要です。
 解像度はレンズ、センサ感度、感度波長、周期、信号処理、ノイズ等多くの要素が影響します。顕微鏡サーモグラフィ計測では測定対象が小さいためより高い解像度を必要とします。ボケて温度値が低下してしまっては計測機として用いることができません。そのため全ての要素で高い品質が提供されなければなりません。

レンズで拡大するだけでは足りない。 特別なキャリブレーションが必要。

レンズは重要な要素ですが、拡大するだけでは正確な温度計測には不十分です。専用のキャリブレーションと補正技術が必要です。通常のサーモグラフィのキャリブレーションではたとえ改造していたとしても温度過小評価する場合があります。
 通常のサーモグラフィのキャリブレーションは画面全体の平均値をプロットしていきます。そのため精度とは画面全体の平均値をさします。しかし顕微鏡サーモグラフィ計測は画素ごとの局所温度を計測することを目的とするため、標準的なキャリブレーションだけでは局所の正確な温度計測は難しいため顕微鏡サーモグラフィ計測専用のキャリブレーションが必要になります。

 顕微鏡サーモグラフィ計測

 これらの技術的課題をハード面、ソフト面でクリアして初めてミクロンレベルの温度計測が可能になります。
 加速する製品小型化、低消費電力、高性能への要求にこたえるためには発熱問題の対応が必須であり、計測が重要になります。熱電対では計測できない領域であるからこそ顕微鏡サーモグラフィ計測の技術が重要になっています。

 サーマルヴューX MCRシリーズ

 サーマルヴューXMCRシリーズは前述の技術的課題をクリアし高性能を追求した微小領域計測専用のサーモグラフィです。一部を拡大するためだけのマクロレンズではなく専用の顕微鏡サーモグラフィ用レンズを搭載し、高感度センサで小さな信号を検出します。局所の計測に耐える専用キャリブレーションを行い、100ミクロン以下の温度計測でも高い精度を実現します。
 サーマルヴューXMCRシリーズは既に60を超える機能があり、様々な用途に応えます。民間企業、大学、公的研究機関等多くの実績があり、東京都中小企業振興公社からは海外展開支援の製品指定をいただいております(2024年6月~2026年5月)。世界的に競争が激しくなっている超小型製品の開発を支援する計測器として導入が海外でも進んでいます。