- 赤外線の検知方式の1つで、冷却しないと感度の得られないセンサ(カメラ)を指します。
赤外線の検知方法は主に二種類に分けられます。量子型と熱型です。
量子型とは赤外線を光子としてとらえる方式で一般的な可視のデジカメと似ています。
検知素子に化合物半導体を使用しており、InSbやMCT、QWIPなど波長特性のあるセンサを使います。
また熱励起により室温では使用できないため、通常-196℃に冷却します。そのため冷却型とも言います。
冷却型のイメージセンサはかつては液体窒素で冷却していましたが、
現在では連続的な断熱膨張による冷却を繰り返すスターリングサイクルを利用したスターリングクーラーを使用しています。
そのため電源を入れれば、一定時間(通常7~10分)で液体窒素温度までセンサは冷却され、
故障がない限りは連続的に使用が可能になり、冷却の手間は大幅に省かれました。
現在平均故障時間はそのグレードによって5000から20000時間となっています。
センサはデュワと呼ばれる窓付きのケースに収納されており、コールドフィンガを伝ってセンサ背面から冷却されます。
デュワ内にはコールドシールドと呼ばれる迷光防止用の遮蔽があり、シールドでF#が規定されます。
冷却カメラ用のレンズはこのデュワ、コールドシールドを考慮したレンズが必要で、またF#を合わせる必要があります。
近年多数を占める非冷却型と異なり短時間の露光、高いフレームレート、高感度、高い再現性を得ることができ、波長も近赤外から遠赤外まで選択できます。
一般に計測目的ならInSb、高速応答ならMCTを選択しますが、近年その差は縮まっています。早いものではマイクロ秒以下での露光が可能で、通常16ミリ秒、高速タイプでも4ミリ秒の非冷却型とは全く違う計測が可能です。よってフレームレートも非常に高く、フルフレームで数百フレーム、ウィンドウイングでは数千、万フレームののものもあります。
非常に高感度であるためバンドパスをかけてガスを可視化することも出来ます。
非冷却でバンドパスをかけると感度が不足し、高濃度のガスしか見えない,ということが起きますが、
冷却型では狭いバンドでも十分な感度を得ることが出来ます。
極低温に安定させ、シールドで守られているため非常に高い信号安定性が得られます。
非冷却ではその動作原理、機構上、ある程度の信号ドリフトが避けられませんが、冷却型では再現性良く信号取得が可能です。
非冷却型と異なり、動作原理上波長特性があります。
センサの感度波長はそのバンドギャップに依存します。主に3~5μmの中赤外域ですが、
MCTやQWIP、QDIPのように近、中、遠赤外域のいずれかに感度を持たせたものや、
SuperLatticeのように同じ帯域で感度波長が違うものもあります。また2波長などのマルチバンドセンサも存在します。
主に防衛用途で複数の波長検出により、物体の識別や特性解析に使われます。
メリットがかなり大きな冷却型ですが、デメリットもあります。
クーラー搭載ゆえに大型で重く、ハンディ型には向きません。
機構の多さ、製造難易度、数量などの理由から、非冷却型に比べ大変高価です。
そのため市場では非冷却型が多数を占めます。
主に研究開発用途や半導体解析、ガラス越しの温度計測、宇宙防衛など特殊用途に限られているのが現状ですが、
3桁以上違うその応答性、感度から冷却型でないと実現できない計測があるのもまた事実です。