サーモグラフィは画像で温度が計測できる点が他の計測機と大きく異なる点ですが、
これは2つの側面から考える必要があります。
サーモグラフィは熱の分布を画像として取得するという点で非常に優れており、
この場合、性能面では温度分解能、均一性、周辺減光、ドリフトが影響しますが、
最も重要なのは温度分解能です。
熱分布取得目的では画面内の高温あるいは低温部の検知、認識が重要となるため、目的の温度差を見分けられるかどうかが、鍵となります。
別の側面は画像で温度計測を行うという点です。
サーモグラフィの温度測定は事前にある環境条件において黒体炉から読み取れた輝度情報との比較で行います。
その事前に記憶させた輝度情報をキャリブレーション(較正)と言い、黒体炉の温度値とサーモグラフィの計測値のずれを温度精度と言います。
環境条件が較正条件と変わらなければ、(放射率が同じ被写体なら)基本的に同じ値が読み取れるということになります。
しかしサーモグラフィの計測において同じ条件での計測は難しく、様々な要因で測定値が変動します。
つまり50℃の黒体炉を較正条件下では51℃と表示している場合、測定精度は1℃ですが、環境条件が変わった時に50.5℃を示している、ということがあるということになります。
この変動が測定再現性になります。異なる時間に撮影する場合や、撮影環境条件が異なる場合に測定再現性が鍵になります。
上記の場合が最大変動であれば、測定再現性は0.5℃ということになります。つまり2つのデータの誤差は0.5℃あるということになります。
これは測定精度や温度分解能とは別の要素で、前後の比較を行う場合などに注意を払う必要があります。一般にカメラのグレードが高いと測定再現性は高い(誤差が小さい)傾向があります。
熱対策、高いNUC精度、高い温度分解能が実現されているためです。
ローエンドや小型タイプの場合、あるいはより高い再現性を求める場合には、撮影上の工夫とソフトウェア上の補正が必要になります。
高温部の検知など分布として検知することと、温度計測として値の差を見るのでは、求める温度分解能も異なります。
温度分解能はカメラ信号S/N比であり温度差としての限界値となりますので、計測したいギリギリの値ではなく、
温度計測において見たい温度差に対し十分に小さな温度分解能を求める必要があります。
積算などを行う前の1フレームの温度分解能で比較して、十分かどうかを用途ごとに判断します。