サーモグラフィにおける放射率とは、黒体を基準としたある波長における全放射エネルギーで同一波長の測定対象物が放射するエネルギーを割った比率を指します。
大雑把に言えば「それぞれの物質の赤外線の放射効率」ということになります。
放射率をより理解するためには以下続く前提を理解する必要があります。
放射率とは何かを理解する上で重要な概念が黒体です。
黒体とは全ての入射する電磁波を吸収する理想体で、入射電磁波の反射や透過はありません。全ての波長で最も効率よく電磁波を放射します。最も強い放射の波長は、黒体の温度で決まります。
黒体の放射強度は以下のプランクの式により求まり、下のグラフのようになります。
測定する物質が図のような黒体であり黒体放射するならば、サーモグラフィから見た赤外線は物質の温度に応じた赤外線放射のみとなります
(ここでは大気の揺らぎ、サーモグラフィ筐体・光学系の揺らぎは除きます)。
この場合、温度換算は非常に単純なものになり、測定精度は高いものになりますが、物質は黒体ではなく、ある割合でしか放射しません。
その割合を放射率と言います。
図の緑色のスペクトルが黒体放射、青いスペクトルが起こりうる放射例です。
このように黒体放射と現実に起る放射は同じではなく、同じ温度でも各波長ごとに放射量が異なります。放射率はある波長(域)での黒体放射の積分値と実際の放射の積分値を除算します。